前回は、ストレスを感じるとお腹が痛くなったり、便通が変化したりすることがある「脳から腸への影響」について学びました。
でも、脳と腸の関係は一方通行ではありません。
脳から腸へ。そして、腸から脳へ。
今回は「腸脳相関」のもう一つの方向、腸から脳へのつながりについて調べてみました。
腸はただの「消化管」ではない
腸では毎日、さまざまなことが起こっています。
食べ物が入ってくる。
腸が伸びる。
腸が動く。
炎症が起こる。
腸内細菌が代謝物を作る。
こうした腸の状態に関する情報は、神経系・免疫系・ホルモンなどを介して脳へ伝えられています。
つまり腸は、食べ物を消化して便を作っているだけの臓器ではないんですね。
腸と脳をつなぐ「迷走神経」
腸と脳の情報伝達で重要なルートの一つが迷走神経です。
迷走神経は、脳と腸をはじめとするさまざまな内臓をつないでいます。
脳から腸へ指令を出すだけではありません。
腸の状態を脳へ知らせる情報も伝えています。
脳が一方的に腸をコントロールしているのではなく、お互いに情報をやり取りしているということです。
腸内細菌も脳に関係する?
ここで登場するのが、これまで何度も勉強してきた腸内細菌です。
腸内細菌は食物繊維などを利用して、短鎖脂肪酸をはじめとするさまざまな代謝物を作ります。
それらが腸の細胞や免疫系などに作用し、その影響が神経や血流などを介して脳にも伝わる可能性が研究されています。
ただし、腸内細菌そのものが脳へ移動しているわけではありません。
「この菌を増やせば脳が元気になる」といった単純な話でもありません。
「幸せホルモンの90%は腸で作られる」って本当?
腸活について調べていると、よく見かけるのが、
「幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの約90%は腸で作られる」
という話です。
体内のセロトニンの大部分が消化管に存在すること自体は知られています。
ただし、ここには大切なポイントがあります。
腸で作られたセロトニンが、そのまま脳へ行って幸せな気分にしてくれるわけではありません。
末梢のセロトニンは血液脳関門を通ることができません。
脳で働くセロトニンは、脳内で作られます。
「腸でセロトニンを作る→脳へ届く→幸せになる」という単純な仕組みではないんですね。
じゃあ、腸と気分は関係ない?
そういう意味でもありません。
腸内環境とストレス反応、気分、認知機能、睡眠などとの関係については、現在もさまざまな研究が進められています。
腸内細菌の代謝物や迷走神経、免疫系など、いくつもの経路が関係している可能性があります。
ただし、人での研究にはまだ分かっていないことも多くあります。
「腸を整えればメンタルも治る」
とまで言えるものではありません。
腸と心の関係は、それだけ複雑なんですね。
「腸は第二の脳」ってどういうこと?
もう一つよく聞くのが、**「腸は第二の脳」**という言葉です。
腸の壁には「腸管神経系」と呼ばれる独自の神経ネットワークがあります。
脳から一つ一つ指令を受けなくても、腸の動きや分泌などをある程度自律的に調節できます。
その特徴から「第二の脳」と表現されることがあります。
もちろん、腸が本当に考えたり感情を持ったりしているわけではありません。
腸の特徴を分かりやすく表した呼び名です。
腸だけを見ていても、腸は語れない
ここまで腸活を学んできて、だんだん分かってきたことがあります。
腸内細菌だけでもない。
食物繊維だけでもない。
発酵食品だけでもない。
食事、睡眠、運動、ストレスなど、いろいろなものがつながって私たちの体はできています。
脳から腸へ。
腸から脳へ。
お互いに情報を送り合っているのが「腸脳相関」です。
だから腸活も、何か一つを完璧にする必要はありません。
しっかり眠る。
適度に動く。
バランスよく食べる。
ゆっくり休む。
そして、自分をいたわる。
腸だけを整えようとするのではなく、毎日の生活全体を整えていく。
できることから一つずつ。
その小さな積み重ねが、腸だけではなく、心や体を支えることにもつながっていくのだと思います。
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